忍者ブログ

ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

ダケカンバにも、7種のカメムシが!!

若いころ(?)、昆虫採集を兼ねて山登りをしていると、
だんだん標高が高くなって、ダケカンバが散見されるようになると、
急に虫の種類と数が少なくなってしまうことを、何度か経験した。

昔の経験から、ダケカンバには、あまり虫(カメムシ?!)が、
いないものだと思い込んでいたのだが・・・

 

関東では、森林限界付近にしか生育しないダケカンバが、
家から車で1時間ほどの酸ヶ湯温泉周辺(標高900m)で見られる。

しかし、上記のような理由もあって、しばしば訪れる場所なのに、、
あまり熱心に、ダケカンバにいる虫を探したことがなかった。


弘前へ移り住んでから5回目の夏、
初めて、黒石市の nabita 氏に同行させていただき、
ダケカンバの果実には、結構虫がいることを知った。

 

ヒメセグロベニモンツノカメムシ幼虫(ツノカメムシ科)

2013年7月14日 酸ヶ湯温泉・青森

大駐車場そばのダケカンバの葉裏で、
ツノカメのふ化幼虫集団を見つけた。

この集団は、ヒメセグロベニモンツノカメの幼虫であるとのこと。

 

 

クロヒメツノカメムシ(ツノカメムシ科)

2013年7月14日 酸ヶ湯温泉・青森

つづいて、クロヒメツノカメムシの雌成虫を発見。

よく見ると、お腹の下には、黄色い卵塊が見える。
この子は、ヒメツノカメムシと同様に、卵を保護中である。


 


それから、2週間後・・・


 


クロヒメツノカメムシ幼虫集団(ツノカメムシ科)

2013年7月27日 酸ヶ湯温泉・青森

上の写真とは、少し離れた別の場所で、おそらく3齢幼虫を発見。

このときは、付近に雌成虫の姿はなかった。

 

 

チャモンナガカメムシ(ナガカメムシ科)

2013年7月27日 酸ヶ湯温泉・青森

今回は、果実がある木を重点的に探した。
果実で、ようやく見つけたチャモンナガカメムシは、
珍品ではないが、今回初めてであったカメムシである。

通常はヤマグワやニワトコで、見つかることが多いようだ。


 


そして、秋の気配がようやく感じられる頃・・・


 


ウスイロヒラタナガカメムシ幼虫(マダラナガカメムシ科)

2013年9月11日 酸ヶ湯温泉・青森

多少色づき始めた果実を探すと、比較的簡単に見つかった。

本種も、nabita 氏の同定によるものだが、
この時期、ダケカンバの果実で、10個以上の幼虫集団がいた。

どうやら、こちらもダケカンバの果実で育つ普通種のようだ。

 

 

スコットカメムシ幼虫(カメムシ科)

2013年9月11日 酸ヶ湯温泉・青森

果実以外でも、葉っぱの上に、カメムシはいた。

真ん中にいる大きな幼虫は、スコットカメムシで、
小さく見える数個体は、ウスイロヒラタナガカメムシ幼虫。

 

 

ハサミツノカメムシ(カメムシ科)

2013年9月11日 酸ヶ湯温泉・青森

そして、まさかの大型ツノカメ発見。

葉っぱの隙間にいて、見にくかったので、
一瞬イシハラハサミツノカメと思った。

 

 

さらに、その1ヶ月後・・・・

 

 

スコットカメムシ成虫(カメムシ科)

2013年10月10日 酸ヶ湯温泉・青森

この日は、今年のダムサイトに、クサギカメムシに代わって、
沢山集まっていたスコットカメムシの成虫を発見。

 

 

エゾアオカメムシ(カメムシ科)

2013年10月10日 酸ヶ湯温泉・青森

こちらは、越冬前の体色変化した成虫。
ダムサイトでは、あまり見かけない普通種である。

 

というわけで、虫がいないという先入観しかなかったダケカンバに、
何と、今年だけで、カメムシが7種類も見つかったのだ。


昔のダケカンバの印象が、さりげなく覆されてしまったところで、
今月(11月)の「カメムシ写真強化月間」は終了です。

 

        

拍手[16回]

PR

君は肉食系なの?? ツマジロカメムシ


前回のスコットカメムシに良く似たカメムシがいる。

市街地から、山地まで、どこにでもいるイメージの、
絶対的普通種ツマジロカメムシだ。
Menida violacea Motschulsky,1861

スコットカメムシと同じ Menida 属なのだが、
この子にも、ちょっとだけ不思議な習性があったのだ。

 

 


ツマジロカメムシ(カメムシ科)

2011年9月15日 白岩森林公園・青森

やや金属光沢のある黒っぽい紫色の体に、
真ん中の白斑がひときわ目立つカメムシだ。

都市近郊の雑木林にも普通に分布し、
どんな植物上でも発見されるイメージがある。


というか、ツマジロカメムシの餌植物は、
まだ特定されていないようなのだ。

 

 


ツマジロカメムシ(カメムシ科)

2012年6月2日 だんぶり池・青森

寄主植物が沢山リストアップされているカメムシは、
クサギカメムシのウワミズザクラに代表されるように、
餌植物がなかなか特定できなかった例が多いのだ。

カメムシ図鑑(第1巻?)には、
「山地のキイチゴ、クヌギ、キリ、フジ、ミズナラ、ノリウツギ、
 ニワトコなど多くの植物に寄生し、初夏から夏にかけて産卵する。
 クロタマゾウムシの幼虫を捕食するといわれる」
と書かれていた。

そういえば、私も、(ずいぶん前の話だが)
サクラの木で見つけた多分ツマジロカメムシの幼虫を、
枝ごと持ち帰って、そのまま飼育しようとしたことがあった。
そのときに、偶然葉っぱに産み付けられていた蛾の卵塊から、
幼虫が吸汁しているのを見かけたことを覚えている。

図鑑に載っていたクロタマゾウムシの幼虫も、
多分移動性が少なく、卵のようなものだと思う。

 

 


ツマジロカメムシ(カメムシ科)

2013年9月10日 梵珠山・青森

というわけで・・・・

もしかしたら、ツマジロカメムシは、肉食もする雑食性(?)で、
単に、動物質の餌を求めて歩き回っているところを採集されて、
沢山の植物が、ホストとして掲載されている可能性があるのだ。

こんなことは、幼虫を捕まえてきて、飼育してみれば、
簡単にわかることなのだが・・・・

 

 

さらに・・・・

 

 

ツマジロカメムシ産卵中

2012年5月29日 南湖公園・福島

これは珍しい(?)ツマジロカメムシの産卵場面である。

ところが、産み付けている植物が、
今まで、ホストとしてリストアップされたことがない(多分?)、
有毒成分を持つケシ科のタケニグサの葉裏なのだ。

 

 


ツマジロカメムシ産卵中

2012年5月29日 南湖公園・福島

カメムシ科でも、何種か食草外産卵は知られているが、
この種でもそうである可能性は、十分ありうるだろう(注)

しかし、このことは、
本種が肉食系(?)カメムシで、クチブトカメムシのように、
どんな植物にでも産卵する可能性を示しているとも考えられるのだ。

 


(注)私も学生時代、実験材料として、
   ナガメを大量に飼育したことがあるが、
   基本的に餌植物であるアブラナ科の葉や茎に産卵することはなく、
   ほとんどが、飼育容器の壁面に産卵した。

   この性質が分かってからは、後処理が楽になるように、
   ジャバラに折りたたんだ「ろ紙片」を、飼育容器内に入れて、
   そこに産卵させていた。

   ふ化幼虫は、基本的に餌植物から吸汁しないので、
   こんなことができるのだと思っていた。

   ただ、その生物学的意味については、
   卵寄生蜂対策かもしれないとは思っていたのだが、  
   実験的に確かめることはできなかった。

   

     

拍手[17回]


今年のダムサイトは異変? スコットカメムシ

今月は、「カメムシ写真強化月間」です。
頑張って、不定期にブログ更新します。


カメムシ目の大型種を6回に渡って紹介してきたが、
前回で種切れとなって、ここからはランダムに?!

 

まず、今年の浅瀬石ダムサイト情報から・・・


と言っても、話題は、ただひとつ。
今年は、クサギカメムシが、極端に少なかったのだ。


昨年までは、目につくカメムシの9割以上は、
クサギカメムシだったのに(注1)


そして、さりげなく今年の主役として登場したのが、
学名と和名が整合性がなくなってしまったスコットカメムシ(注2)
Menida disjecta (Uhler,1860)

越冬時に、家屋に侵入する不快害虫の代表でもある。

 


スコットカメムシ(カメムシ科)

2013年10月31日 浅瀬石ダム・青森

この状態は、まるで昨年のクサギカメムシのようだ。

写真には、多分30匹以上写っていると思うが、
その全てが、スコットカメムシである。

 

 


スコットカメムシ(カメムシ科)

2013年10月31日 浅瀬石ダム・青森

もちろん以前から、スコットカメムシは、
晩秋のダムサイトの常連客であり、
毎年、ヨツモンカメムシやベニモンツノカメムシとともに、
見つけやすい種類ではあるのだが・・・

 

 


スコットカメムシ(カメムシ科)

2013年10月31日 浅瀬石ダム・青森

しかし、今年は、昨年とは全く様子が違っていた。

浅瀬石ダムサイトは、スコットカメムシだらけなのである。

ずっと頑張っていたクサギカメムシが、何故か激減してしまって、
そのかわりに、スコットカメムシが激増(?)したのである。

 

 


スコットカメムシ(カメムシ科)

2013年10月31日 浅瀬石ダム・青森

しかも、ダムサイトでは、あまり見かけることのない、
交尾中のカップルを、ときどき見かけた。


成虫越冬する虫たちの交尾は、春~秋の活動期に行われるが、
スコットカメムシだけ(多分?)は例外で、
越冬中(越冬前後!)に交尾することが知られている。

このような特異な交尾の機能と、適応的意義については、
岡山大学の研究グループによって、すでに明らかにされている。

詳細については、日を改めて紹介したい。

 

 


スコットカメムシ(カメムシ科)

2013年10月31日 浅瀬石ダム・青森

しかしながら、一体何故、昨年までのクサギカメムシが、
来なくなってしまったのだろうか?

この写真も、スコットカメムシだらけで、
昨年の王者クサギカメムシの姿は、全く見られない。

 

かなりの謎、なのである。


 


(注1)今年はクサギカメムシが目立つなぁ~
    ↓  ↓  ↓
    http://kamemusi.no-mania.com/Date/20121103/1/


(注2)本種の和名は、Menida scotti Puton,1886 の種小名からきているが、
    scottidisjecta の異名となって、学名が変更されたことになる。

    そのため、スコットカメムシでは意味が分からなくなってしまったが、
    おそらく、混乱を避けるため、和名は変更されなかったようだ。 

    


 

拍手[17回]


やっぱりカッコイイ!! トホシカメムシ

今月は、「カメムシ写真強化月間」です。
頑張って、不定期にブログ更新します。

お気づきのように、ここ数回は、
カメムシ類のそれぞれの科を代表するような大型種を、
順次取り上げてきた。

それでは、肝心のカメムシ科を代表する大型種は???

 

個人的には、ツノアオカメムシかトホシカメムシか、
かなり迷うところではあるが・・・・・・(注)

 


日本産カメムシ科の大型種トホシカメムシ。
Lelia decempunctata Motschulsky,1860

通常は、鮮やかな黄色~黄褐色で、
前胸部の両端が、前方に突出した大きなカメムシ。

山地の広葉樹林で見られ、ニレ類、カエデ類、サクラ類、
ミズキなどの樹上に生息している。

だから普通は、あまり目にすることはなく、
珍品として、問題ないと思う。

 


トホシカメムシ(カメムシ科)

2011年11月1日 玉川ダム・秋田

カメムシの仲間は、個性的な形態のものが目立つ。

多くのカメムシのツノの部分(前胸背側角)は、
外側(?)に突き出すのが普通だ。
しかし、トホシカメムシは、例外で、前方に突き出している。

 

 


トホシカメムシ(カメムシ科)

2012年10月14日 浅瀬石ダム・青森

この子のように、普段は樹上部にいるので、
なかなか見つけにくいカメムシ類は、
晩秋のダムサイトで撮るのが一番手っ取り早い。

 

 


トホシカメムシ(カメムシ科)

2012年7月21日 白岩森林公園・青森

前胸部に4つ、小楯板に6つの黒い斑紋があり、
これが、トホシカメムシという和名が付いた由来だろう。

ただ、前翅革質部にも黒点が2つ目立つので、
多少の違和感があるのだが・・・(ジュウニホシ?)

 

 


トホシカメムシ(カメムシ科)

2012年10月14日 浅瀬石ダム・青森

実は、お腹側の色も個性的(?)で、きれいな色あいである。

数えてはいないが、お腹にも黒い斑紋がいくつかある。

 

 


トホシカメムシ(カメムシ科)

2011年9月8日 白岩森林公園・青森

これは、脱皮直後の終齢(多分5齢)幼虫。

この状態をテネラルと呼ぶが、ツノが前方に突き出して、
さりげなく、成虫の面影がある。

ただ、腹部にある3か所の臭線開口部は、まさに幼虫である。

 

 

(注)今回は選にもれたツノアオカメムシの方は、
   何度かこのブログで紹介した。
   ↓   ↓   ↓
   http://kamemusi.no-mania.com/Date/20101021/1/

   
   
   私のカメムシ採集の原点となったカメムシである。

        

拍手[17回]


さりげない色彩変異? オオモンキカスミカメ

今月は、「カメムシ写真強化月間」です。
頑張って、不定期にブログ更新します。

 

日本産カスミカメムシ科の最大種オオモンキカスミカメ。
Deraeocoris olivaceus Fabricius

体長は約15mmだが、小型種ばかりのカスミカメ類の中で、
本種は、(ネット情報では)世界最大級レベルの大きさである。

 


オオモンキカスミカメ(カスミカメムシ科)

2012年6月28日 燕岳山麓・長野

カスミカメの仲間は、日本に500種程度いるとされ、
カメムシの仲間でも、種類数の多いグループである。

しかも、これから紹介するように、個体変異も多く、
画像だけでは同定できない場合が結構多いのだ。

 

 


オオモンキカスミカメ(カスミカメムシ科)

2013年6月12日 安曇野・長野

この個体は、赤褐色の体色に、赤色の紋が二つある。

ちなみに、四国や九州で見つかるものは特に赤味が強く、
別種のヒイロオオモンキカスミカメとされている(注)

 

 


オオモンキカスミカメ(カスミカメムシ科)

2013年6月12日 安曇野・長野

当然、普通種ではないようで、私も、
なぜか長野県でしか、撮影記録がない。


ハムシの幼虫などを捕らえて、体液を吸う。

この雰囲気なのに、彼らは肉食系(!)なのだ。


 

ところが・・・・

 


オオモンキカスミカメ(カスミカメムシ科)

2012年6月28日 燕岳山麓・長野

全く雰囲気の違うこの子も、
オオモンキカスミカメなのだ。

まるで別種である。

 

 


オオモンキカスミカメ(カスミカメムシ科)

2012年6月29日 野反湖・長野

こっちは、赤色の紋の形状が違うし、微妙に色も違うが、
多分オオモンキカスミカメのようだ。

もしかしたら、別種かもしれない・・・・

カスミカメの仲間は、姿は全く同じなのに別種である場合や、
どう見ても別種のような雰囲気なのに、実は同種だったりする。

それが、カスミカメの魅力(?)なのかもしれない。

 


(注)ヒイロオオモンキカスミカメ
   Deraeocoris erythromelas Yasunaga & Nakatani, 1998

   本州には、オオモンキカスミカメが生息するが、
   四国や九州で見つかるものは、特に赤味が強く、
   ヒイロオオモンキカスミカメとして、別種とされている。

   人名とまぎらわしいが、ヒイロ(緋色)とは、
   黄色がかった鮮やかな赤をさす色のことである。

     

拍手[17回]