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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

これは不自然淘汰?? モンクロギンシャチホコ幼虫


シャチホコガ類の幼虫には、特異な姿かたちの種類がおり、
このブログでも何種か紹介したことがある。


今回の幼虫も、かなり不思議な形状だ。


まず、以下の2枚の写真をご覧ください。

同一個体の頭部と尾部を、トリミングしたものだ。

 

 

幼虫頭部

2015年8月12日 十石峠・長野

やや肥大した頭部で、縦縞のスイカのよう?  

それに続く胸部は、鮮やかな黄緑色に、
背の部分は濃褐色の線がある。

 

 

 


幼虫尾部

2015年8月12日 十石峠・長野

こんな雰囲気の絵は、どこかで見たことがある。

まるで、南米の土産物のような模様か? (行ったことないが・・・)


 ⇒この2枚の写真が、同一個体とは思えない!!

 

 

 


・・・ようやく、イモムシの全体像!!!

 

 

モンクロギンシャチホコ幼虫(シャチホコガ科)

2015年8月12日 十石峠・長野

実は、頭部と尾部だけでなく、
背中全体もかなり複雑な模様なのだ。

まるで、デザイナーが描いた抽象画のようなイメージだ。


 ⇒これは、保護色なのか、警戒色なのか?

 

 

 


横から見ると!!!

 

 

モンクロギンシャチホコ幼虫(シャチホコガ科)

2015年8月12日 十石峠・長野

まあ、普通のイモムシだ。

ただ、前半部が半透明な黄緑色の身体で、
後半部は典型的なイモムシ状なので、
背中から見た場合と、全く雰囲気が異なる。

胸部の歩脚は微妙に長く、イモムシの脚には見えないが、
中央に見える疣(イボ)足は、一般的なイモムシの形状だ。

ただ、その後ろ側が、尻尾のように異常に長い!!!


 ⇒このアンバランスな雰囲気が、かなり不思議だ。

 

 

 


モンクロギンシャチホコ幼虫(シャチホコガ科)

2015年8月12日 十石峠・長野

実は、これが最初に見つけた時の写真。

確か、食草はサクラの葉っぱだったはずだが、
今回は、何故かススキの葉にいた。


食草にいるわけではないので、やや微妙だが、
この状況では、枯れ葉に擬態しているように見える。

背中の模様が見えないと、保護色的な色彩なのだろう。

 


ただ、ふたつ上の写真のように、
真上から見たときの複雑な抽象画のような模様は、
どこにいても、かなり目立つはずだ。

特に防御手段を持たない虫たちが、
よく目立つ体色である場合も少なくない。

  ⇒これは、もしかしたら「不自然淘汰」?!

 

 

おそらく「ODDTY」の可能性もあるので、
興味ある方は、以下の記事も、是非ご覧ください。

【変わり者の特権 これも自然淘汰なの?】
 ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150222/1/


鳥類のような視覚的に獲物を探す捕食者の多くは、
獲物に対して、サーチングイメージができるので、
直前に食べた虫たちを狙う習性がある。

だから、過去に出会ったことがないような、
奇妙な格好をしている虫たちを見つけても、
一瞬、攻撃を躊躇する可能性がある。


このように、普段ありえないような姿かたちの虫たちが、
自然淘汰で進化する可能性も十分あるのだ。

     

 

 

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不思議な緑色の蛾 アオスジアオリンガ


以前、このブログで、紹介したことがあるが、
バッタやカメムシの仲間を除くと、
身体全体が緑色の昆虫は、意外に少ないような気がする。

 

美麗種が予想以上に多い蛾の中でも、
私の中では、ベスト10に入るほどの緑色の蛾がいる。

白色の2本の線が入った、前翅全体が緑色の蛾なのだが、
名前はシロスジ~~ではなく、アオスジアオリンガという。

 

 

 

まずは、写真を見ていただこうemoji

 

 


アオスジアオリンガ春型♀(コブガ科)

2015年6月11日 酸ヶ湯温泉・青森

 

・・・・・・どこにいるのか、分からない???

普通は、夜間常夜灯のもとでしか見ることはないのだが、
この緑色は、やはり保護色として十分機能していた。

酸ヶ湯温泉付近の遊歩道のダケカンバには、
比較的多くの種類のカメムシがいるので、
葉っぱの表裏や果実などを、結構まじめに探すのだが、
至近距離で、これだけのサイズの虫を、見逃す寸前だった。


まさに「・・・ん!?、何だ!!!」と言う感じだった。

 

居場所がすぐに分かった方は、相当のマニアである。

この時期のダケカンバの新葉と、まさに同じ色あいの蛾なのだ。


 ⇒幼虫は、ブナやミズナラ以外に、
  カバノキ科植物の葉も食べるようで、
  多分ダケカンバにも産卵するのかもしれない。

 

 

 

 

アオスジアオリンガ春型♀(コブガ科)

2015年6月11日 酸ヶ湯温泉・青森

近づいて良く見れば、まさに蛾なのだが・・・

こんな感じで、常夜灯以外で見つかるのは、
滅多にないことなので、ちょっとだけ嬉しくなる。


いずれにしても、典型的な保護色だと思う。

 

 


上の写真タイトルに「春型♀」と表示した理由は、
翅に赤い帯がある警戒色のような「春型♂」がいるからである。

 

 


アオスジアオリンガ春型♂(コブガ科)

2014年6月5日 矢立峠・秋田

この子は、道の駅の常夜灯付近にいたが、
良くあることなのだが、森の中に帰りそびれたのだろう。


もし仮に万が一、この子が、ダケカンバの葉っぱにいたら、
やっぱり、良く目立つことだろう。


むしろ、以前このブログで紹介した「人面」のようにも見える??

【擬態??②/④ 動物の顔】
 ↓   ↓   ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20141204/1/

 

 

 

 

アオスジアオリンガ春型♂(コブガ科)

2014年6月5日 矢立峠・秋田

このように、雌雄で体色が正反対(保護色と警戒色)になるのは、
動物の世界では、決して珍しいことではないと思う。

そんな体色は、多くは交尾行動に関係しているようだ。

 

ネット情報では、本種には、春型と夏型があって、
一部の春型の♂が、翅の横線に沿って赤色の帯が出る。

と言うことは、全ての春型の♂が赤い訳ではなく、
もちろん、夏型には見られない現象でもある。

だから、この赤色が、特に生存に有利に働くことはないのだろう。

 

このように、生存に有利でも不利でもない形質が、
一世代を飛ばしても(春型のみに出現!)、
子孫に伝えられていくということは、
やっぱり、ちょっとだけ不思議なことだと思う。

 

・・・・不思議で片づけてはいけない。

 

翅に赤色帯のある個体の出現(突然変異?)と、
その形質の生存価値の可能性(自然淘汰?)については、
交尾行動を含めた、より詳細な生態観察が必要だと思う。

そうすれば、「一部の雄だけに一世代おきに」出現するような、
不思議な赤色帯の存在理由が、少しずつ明らかになってくるだろう。

 

 

   

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不思議なベイツ型擬態?? ヒゲナガヒロクチバエ


どんな生き物の場合でも、たった1枚の写真があれば、
細かく文章で記載するより、遥かに多くの情報を、
ほんの一瞬で伝えることが出来る。

場合によっては、動画よりも、写真の方が適していることもある?


ただし、虫たちの場合には、その1枚の生態写真だけを見ると、
(図鑑に掲載されている写真とは、全く異なって、)
例えばその虫が、ハチのなか、アブなのか、
瞬間的には、判断に迷うことがあるのだ。


ただ、このことは、写真の限界を示しているのではなく、
虫たちの「驚くべき適応戦略」の方を、驚嘆すべきなのだろう。

 

 

・・・例えば、

 

 

ヒゲナガヒロクチバエ(ヒロクチバエ科)

2010年7月21日 だんぶり池・青森

この写真だけを見れば、ほとんどの人がハチと言う。

私も最初は、ハチが肉団子を作っていると思った??

 

 

 

 

ヒゲナガヒロクチバエ(ヒロクチバエ科)

2015年7月10日 だんぶり池・青森

これは、ハチに似せた典型的なベイツ型擬態の種だろう。

写真では分かりにくいが、胸と腹の間が細くなっており、
このブログで言うところの「ミラクル擬態」だろう。


ただ、ハチ擬態にしては、金属光沢が強すぎて、
モデル種のハチがすぐには思いつかない。

 ⇒気になる点を挙げれば、複眼にある縞模様で、
  これはアブの仲間に多く見られる。

 

 

 


ヒゲナガヒロクチバエ(ヒロクチバエ科)

2015年7月12日 だんぶり池・青森

この子は、名前の由来となった(?)大きな口で、
葉っぱの水分を舐めているのだろうか?


ネット情報では、ヒロクチバエ科は熱帯性の種類が多く、
本種が、一番北に分布しているようだ。


それにしても、翅の付き方(位置)が、ちょっとだけ不思議だ。

翅の付く場所が、かなり後方寄りに見えるのは、
頭と胸が、異常に発達(長く!)しているからだろう。

 

 

 

 

ヒゲナガヒロクチバエ(ヒロクチバエ科)

2015年7月12日 だんぶり池・青森

この写真では、2匹が重なり合っているようにも見える。
まるで、雌雄が交尾しているようだ。


前胸と後胸が大きく、頭部(口?)が長いだけで、
こんな不思議な雰囲気になるのだ。

 ⇒何故、名前がヒゲナガなのかは、不明だ。

  個人的には、クチナガだと思うのだが・・・

 

 

だんぶり池周辺の林道では、普通に見ることが出来るが、
最初は、ハチと間違えてカメラを向けることが多い。

 ⇒もっと言うと、ハチだと思って写真を撮ると、
  何を隠そう半分近くが、アブだったりするのだ!!


恐るべし、アブのハチ擬態!!!

 

 

   

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隠蔽的擬態の典型 多分マダラクチカクシゾウムシ


カメラ片手に、林道をブラブラ歩いていると、
「おや! 何だこれは?」
というような光景に出会うことがある。

 

・・・今回も!!

 

 

多分マダラクチカクシゾウムシ(ゾウムシ科)

2015年5月13日 安曇野・長野

木の芽のように見えるが、何か不自然だ。

こんな感じの「虫えい」もあるし・・・

 

 

 

 

多分マダラクチカクシゾウムシ(ゾウムシ科)

2015年5月13日 安曇野・長野


近づいて、ようやくゾウムシ的な体型(?)を確認。

体長5mm程度の小さなゾウムシであるが、
写真だけの同定は難しそうである。


 ⇒とりあえず、多分マダラクチカクシゾウムシとしたが、
  ネット上の写真をさりげなく見比べるてみると、
  ネット写真の方も結構間違ってる(誤同定)可能性もありそうだ。
  

 

 

 

マダラクチカクシゾウムシ(ゾウムシ科)

2015年5月13日 安曇野・長野

さらに、別角度から・・・


静止する場所(背景の色?)は、やはりここがベストだった?

なんか、必死で演技しているように感じる静止姿勢だ。


擬態に、行動が伴う典型的な例だろう。

 

ただ、このような隠蔽的擬態とされる例では、
この子の場合も含めて、隠蔽というよりは、
むしろ、逆に捕食者に対して、チラッとだけ確認させて、
後は、「私は、あなたの食べ物ではないのよ!」と無視させる、
そんな効果の方が考えやすいのだ。

 

このことについては、以下にまとめてあるので、是非ご覧ください。
↓   ↓   ↓
【隠蔽的擬態の虫は、本当にいるのか?】
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150210/1/

 

 

 


多分マダラクチカクシゾウムシ(ゾウムシ科)

2015年5月13日 安曇野・長野

ちょっと可哀そうだが、葉っぱに移し替えて撮影。

名前の通り、今回の全ての写真で、口を隠している??

 

それにしても、このゾウムシ君!

葉っぱの上にいれば、普通のどこにでもいる雰囲気なのだが、
ひとたび演技を開始すれば、素晴らしい役者に変身するのだ。

しかも、ある特定の場所に逆さに、口を隠して・・・・


この子には、是非、昆虫界のイグアカデミー賞を!!!

 

 

    

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ついに撮れた!! シロシタホタルガ幼虫


ついに撮れたシリーズ(?)、3回目は、
別に大騒ぎすることでもないのだが・・・


今回紹介するシロシタホタルガの幼虫は、
成虫ほど頻繁には見かけることがない。

というか、今回が初めての出会い(確認!)だった。

 

 

 

シロシタホタルガ(マダラガ科)

2015年5月14日 安曇野・長野

フトハサミツノカメムシの雄成虫に出会った後の興奮状態のまま、
多分サワフタギの葉っぱに、典型的な警戒色のイモムシを見つけた。


 ⇒偶然とは言え、同じ日に、同じ場所で、
  撮りたかった虫に、連続で出会ったことになる。

 

見た目の雰囲気は、ホタルガの幼虫に似ているので、
一瞬、ホタルガの幼虫かと思ったが、餌の植物が違う【注】

 

 

 


シロシタホタルガ(マダラガ科)

2015年5月14日 安曇野・長野

付近を探すと、合計10個体ほどが見つかった。

シロシタホタルガの幼虫は、ホタルガ幼虫と違って、
両サイドに赤い模様が一列に並んでいる。


 ⇒それにしても、このように昼間によく目立つ葉っぱの表側で、
  堂々と摂食行動をしているのは、自分は鳥に食われないとう、
  確かな裏付けがあるからなのだろう。

 

 

 

 

シロシタホタルガ(マダラガ科)

2015年5月14日 安曇野・長野

写真をよく見ると、白っぽい短い毛が生えているが、
これは、毒針毛ではなく、触っても大丈夫だ。

もちろん、マダラガ科なので(?)、体内に不味成分を持っている。


 ⇒ただ、ホタルガの場合も同じであるが、幼虫の食草は、
  一般的な有毒植物には分類されていないはずだ。

  他のマダラガ類のように、植物起源の成分を、
  そのまま体内に蓄積しているのではないのかも?

 

一般的に「有毒植物」と呼ばれるグループには、
キンポウゲ科やガガイモ科のような強力な毒性を示すものから、
セリ科やアブラナ科のような穏やかな(?)毒性を示すものまで、
多種多様な植物が知られている。

だから、それらを食べて体内に蓄積する側にも、
それに応じて、完全な警戒色のものから、
どちらとも言えないような微妙な色合いのものまで、
多種多様な昆虫類が知られている。


この非常に興味深い現象については、日を改めて紹介したい。

 

 

【注】以前このブログで紹介したホタルガの幼虫は、
   都市部の公園でも、比較的良く見かける多分普通種で、
   ヒサカキやマサキなどの常緑の葉を食害することが知られている。

   成虫と同様に、幼虫も警戒色のイモムシ(ケムシ?)で、
   どっちが前か分からない不思議な体型をしている。
   ↓   ↓   ↓
   http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130610/1/

 

 

 

 

 

   

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