エイプリルフール・・・なので、アヤトガリバ
本日、4月1日は「エイプリルフール」なので、
『嘘をついても、だれも怒らない』と、
勝手に解釈して、一度やってみたかったネタです。
今回の記事に、真っ赤な大嘘が数ヶ所ありますので、
特に「虫に興味のない方」は、ご注意ください。
⇒虫に興味のある方(殆どの人がそうだと思いますが)は、
文末に「大嘘」を書いた部分を示しますので、
どうぞ、普通に読み飛ばしてください。
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アヤトガリバ類の「翅の破れ目とヘビの模様」の進化について、
今更ながら再考してみる。
まずは、お気に入りの写真から!!!
ウスベニアヤトガリバ(カギバガ科)
2013年7月27日 城ヶ倉・青森
普通に、蛾の翅にヘビのような模様があるのではない。
前翅の付け根付近が、まるで野鳥類に破り取られたように見える。
その中に、ヘビ(コブラ?)のような模様があるのだ。
元記事:【君も自然淘汰の結果なの??? ウスベニアヤトガリバ】
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130824/1/
何故、翅の破れ目の奥にヘビがいるという、
不思議な「手の込んだ(?)模様」になったのだろうか?
⇒今日は特別の日なので、敢えて感想を書けば、
このイメージは、「ピラミッドの守り神」だ。
三角形とコブラ?!
何故、日本にいる蛾の模様が???
アヤトガリバ(カギバガ科)
2014年8月19日 木賊峠・山梨
別種のこの子の翅も、きれいに剥がれたようになっている。
良く見ると、前翅の破れた部分に見えるヘビ(?)は、
下の方が、蛾の胴体とピッタリ繋がっているので、
画家が描いたのではないかと思うほどの「リアルな仕上がり」になっている。
元記事:【これは自然淘汰の結果なの?? アヤトガリバ】
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20140915/1/
こんな雰囲気の、言ってみれば2段階の模様は、
一体どのように進化してきたのだろうか?
例えば・・・
何故「そこまで似せる必要があるのか」と思えるほどの、
ムラサキシャチホコやマエグロツヅリガに見られるミラクル擬態は、
野鳥類との共進化だけで、かろうじて説明可能だと思う。
左: ムラサキシャチホコ 宮古市・岩手(20130814)
右: マエグロツヅリガ 白岩森林公園・青森(20120721)
初期のあまり枯れ葉(モデル!)に似ていない段階から、
捕食者の淘汰圧によって、より枯れ葉に近い擬態者が生き残り、
捕食者もさらに視覚性能をアップさせることで、
徐々に現在の姿かたちに近づいてきた状況は、何となく理解できるのだ。
しかしながら、アヤトガリバ類のように、
「前翅の破れ目の中にヘビがいる」という不思議な模様は、
一体どこを探せば、そんなモデルがいるというのだ。
しかも、その破れ目とヘビの模様を、
捕食者が本当に嫌うのかどうかでさえ、
現時点では、まだ観察例がないのだ。
ずいぶん断定的な書き方をしてしまったが、
実は、これには、ある程度の根拠があるのだ。
【1】アヤトガリバの仲間は、基本的には夜行性である。
⇒夜行性の蛾の多くは、昼間動き回ることはなく、
葉っぱの裏などに隠れて静止しているので、
折角の背中の模様を、視覚で獲物を探す野鳥類に、
見せる機会は、ほとんどないかもしれない。
【2】アヤトガリバ類は、希少種(珍品?)である。
⇒これは、個人的な感想なのだが、
人間が探すのと同じように、野鳥類が昼間に、
アヤトガリバを探し出す(出会う?)確率は、
かなり低いことが予想される。
という訳で、捕食者がヘビの模様に驚いて、
攻撃を躊躇するような機会はほとんどなく、しかも、
たまたま、その現場を人間が観察できる確率なんて、
ほぼ「ゼロ」に近いのだ。
だから、アヤトガリバの「破れ目とヘビの模様の進化」に関しては、
一般的な「捕食者と被食者との共進化」では、
おそらく説明できないのではないだろうか?
そうは言っても、これだけのリアルな模様を、
「単なる偶然の産物で、何の意味もない!」
と、片づけてしまうのも、あまりにも残念だ。
ここで、思い出してほしい。
多くの野鳥類は、かなり用心深く、
一度食べて、安全だと分かっている餌(虫!)を、
次回から探す性質【サーチングイメージ】があるのだ。
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150222/1/
ある実験によると、シャクトリムシを食べた小鳥は、
それがおいしい餌であることが分かると、
「本物の小枝を突っついて確かめる」ほど、
サーチングイメージは、探索行動に重要な役割を担う。
逆に言うと、過去に出会ったことがないような、
奇妙な格好をしている虫たちを見つけても、
攻撃を躊躇する可能性が十分あるのだ。
だから、野鳥類が、初めて見た虫たちを食べることは、
むしろ稀なことなのかもしれないのだ。
⇒捕食者が「怪しい風貌の虫」や「奇妙な虫」を、
初めて出会ったときにも、本能的に避ける傾向があるということは、
アヤトガリバの「不思議な翅の破れ目とヘビの模様」が、
共進化で完成したのではないことを示唆していると思う。
アヤトガリバも、「ODDITY」の世界なのだろうか?
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130123/1/
とりあえず、虫たちのそんなに長くない生存期間中に、
捕食者に遭遇してしまう確率は、幼虫時代の方が高いだろう。
だから、ムラサキシャチホコやマエグロツヅリガの場合も含めて、
短い成虫期間内にしか見られない「リアルなミラクル擬態」って、
本当に意味(費用対効果!)があるのかとも思ってしまう。
少なくとも、今回登場した4種の虫たちは、いずれも珍品で、
そんなに繁栄しているとは思えないからだ。
まあ、その辺が、「ちょっとだけ不思議な昆虫の世界」なのだろう。
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上記の文章の中で、数ヶ所の「大嘘」の部分、
お分かりでしょうか?
数ヶ所どころではない!!
ほとんど全部が、大嘘じゃないか!!
・・・・そんなことはありません。
実は、今回の記事には、
多くの問題点・突っ込みどころがあるとは思いますが、
「根拠のない嘘」を書いたつもりは、
全くありませんので、ご了解ください。
・・・ということは、
最初の赤文字の部分、真っ赤な大嘘が数ヶ所あります というのが、
全くの「嘘」だったのです。
大変・・・お騒がせしました。
【蛇足】: (以下は、大嘘ではなく、個人的な考えです)
本文で示唆したように、アヤトガリバの模様が、
『視覚的に餌を探す捕食者の攻撃を、ちょっとだけ躊躇させる』
というような「捕食者との共進化」の観点からは、
説明が付きにくいかもしれない。
しかし、無理矢理に、捕食者との共進化の結果であるとの前提で、
ちょっとだけ考えてみると、別の問題点も浮かび上がるのだ。
アヤトガリバの仲間(Habrosyne属)は、
日本に、少なくとも6種類が生息するが、
いずれも、特異な姿かたち(基本形は同じ?)であり、
鱗粉の濃淡で破れ目を描き、その中に立体的なヘビの模様がある。
その6種の共通祖先の段階で、前翅に、
「立体的なヘビの模様を持つ基本的な形状」
が、おそらく完成(?)していたのだろう。
その後、何らかの生殖隔離が起こって、
少なくとも6種に種分化したのだが、
前翅の破れ目とヘビの模様の基本形態はそのままで、
色彩・形状が個々の種で、微妙に変化したようだ。
この6種類の種分化した経緯の方は、なんとなく、
「偶然の突然変異の累積と自然選択の法則」で、
説明できそうな気がするのだが・・・
問題は、「共通祖先の段階で、一体何があったのか」だ。
現在の進化論では、軽微な突然変異の累積が
この異様な姿かたちを造り出したと仮定するので、
その中間段階の形状のものが、何故生存できたのかについて、
おそらく説明できないのだ。
アヤトガリバの「破れ目とヘビの模様」は、
現時点では、ほぼ完成品(?)に近く、
だからこそ、「野鳥類の攻撃を躊躇させることが出来る」
という前提が可能である。
しかしながら、通常の隠蔽的擬態やベイツ型擬態とは違って、
翅の破れ目やヘビの中間段階(完成度の低い!)の模様には、
捕食者に対して、何の効果もないはずだ。
つまり、野鳥類(実際は鳥だけではないが)の視覚と
イタチゴッコのようにアヤトガリバのヘビの模様が、
徐々に完成していったという仮説には、
個人的な感想として、大きな落とし穴があるような気がする。
⇒では、一体どんな仕組み(進化の原動力?)で、
こんな模様が完成していったのだろうか?
もう少しだけ、「謎のまま」で残しておこう・・・・
追記(2015年9月13日)
チョウや蛾の翅にある動物の不思議な模様について、
最近日本でも紹介された「サティロス型擬態」という概念で、
統一的に解釈できるようになった。
以下の記事をご覧ください。
【古くて新しい擬態 サティロス型擬態】
↓ ↓ ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20150913/1/