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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

交尾擬態???

 昨年、オスとメスが、互いに協力(?)した新しいタイプの擬態、
仮称【交尾擬態】の例として、鳥の糞に擬態するヒトツメカギバを紹介した。
↓  ↓  ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120918/1/


実は、この蛾が交尾しているところは、
秋田県の芝谷地湿原でしか見たことがなかったのだが、
改めて、手持ちの写真を調べなおしてみると、
白岩森林公園でも、下のような写真が撮れていたのである。


ヒトツメカギバ(カギバガ科)
 
2011年9月8日 白岩森林公園・青森

まさに、芝谷地湿原の個体と同じような重なり方で、
左右対称の蛾の輪郭を見事に消しており、
しかも、葉っぱに隙間なく接着しているので、
これは、まさに鳥のフンである。

キーワード「ヒトツメカギバ 交尾」で、ネット検索してみると、
半数以上の交尾カップルの写真が、同じような姿勢であった。

やはり、これは「交尾擬態」と言っても良いのではないだろうか?

(⇒ぜひ、上のアドレスから元の記事をご覧ください)

 

このテーマは、ちょっとだけ面白そうなので、
手持ちの写真の中から、交尾しているときの姿勢によって、
本来の姿や輪郭が、変化している蛾を探してみた。

 


ウスイロカギバ(カギバガ科)
 
2012年5月18日 芝谷地湿原・秋田

上の写真のヒトツメカギバと全く同じように、
葉っぱの上に、隠れようとせずに重なっている。

このように、オスとメスが微妙に重なっていると、
遠目に見る限り、輪郭が、何となく蛾ではなくなるのだ!!!

 

 

ウスイロカギバ(カギバガ科)
 
2012年5月18日 芝谷地湿原・秋田

さらに近づいて、別角度から見ると、
多少違和感があるが、確かに交尾している。

この違和感というのは、微妙にずれて重なることによって、
左右対称の本来の蛾の輪郭を消しているのだ!!!


ただ、枯葉擬態のウスイロカギバの場合は、明らかに、
鳥糞擬態のヒトツメカギバの交尾擬態【仮称】ほどの迫力はない。

 

 


コガタツバメエダシャク交尾中(シャクガ科)
 
2011年7月5日 だんぶり池・青森

全くの偶然かもしれないが、こんな格好で交尾している蛾を、
何回か見たことがある。

この交尾姿勢も、もしかしたら本来の2匹の蛾の輪郭を、
微妙に消している可能性があると思うのだが・・・

 

 


モンシロモドキ交尾中(ヒトリガ科)
 
1999年6月20日 石垣島・沖縄

ずいぶん昔、石垣島で見つけた昼間飛ぶ蛾である。

この重なり方も、明らかに、蛾の輪郭を消しているようだ。

多少は、鳥のフンに似ているのだろうか?

 

 


モモスズメ交尾中(スズメガ科)
 
2010年6月25日 洞爺湖・北海道

この四角形には、左右対称ではあるが、蛾の輪郭はない!!

最初に見たとき、思わず笑ってしまったのだが・・・


 

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枯葉のような蛾 シロテンツマキリアツバ

 コノハチョウやアケビコノハのように、
枯れ葉に擬態する虫は多く、隠蔽的擬態の好例とされる。


だから、「枯れ葉に擬態する虫は、枯れ葉の上に居ないと意味がない」
こんな表現を、ネット上では、しばしば見かける。

 

これ、本当だろうか?

 

確かに緑色の葉っぱの上に、枯れ葉に擬態してる虫がいれば、
逆に良く目立ってしまう印象がある。

でも、下の写真のように、緑の葉っぱの上にある枯れ葉は、
良く目立っても構わないのだ。

捕食者にとって、枯れ葉は食べ物ではないからだ。

 

 


シロテンツマキリアツバ(ヤガ科)

2011年7月3日 白岩森林公園・青森

遠めの写真は撮れていないが、
シロテンツマキリアツバという蛾である。

いわゆる蛾の輪郭がなく、この距離でも十分枯れ葉に見える。

 

 

シロテンツマキリアツバ(ヤガ科)

2011年7月3日 白岩森林公園・青森

ただ、翅の後縁のギザギザになったような部分は、
蛾の仲間に普通に見られる。

だから、前縁の特異な形状と模様と静止姿勢とが相まって、
十分に枯れ葉をイメージさせるのだろう。

 

 


シロテンツマキリアツバ(ヤガ科)

2011年7月3日 白岩森林公園・青森

上の写真の子を、軽く刺激して、飛び立たせてみた。

まるで枯れ葉が風に舞うように、ヒラヒラと飛んで、
数m先の道路に降りたのを確認して写真を撮ったが、
普通に歩いていたのでは、全く気が付かなかっただろう。

いくら目立っても構わないとはいえ、やはりこの方が、
捕食者に発見される頻度は低いはずだ。

 


本物の枯れ葉??

 
2012年8月6日 金山町・秋田

枯れ葉が、緑の葉っぱの上に落ちている。

拡大してみると、触角がある????

実は、カメラ片手に虫を探しながら、林道を歩いていると、
良く見かける光景であるが、一応、さりげなく反応してしまう。

普通の人や捕食者とは、全く発想が逆であるが、
最近では、枯れ葉を見て、虫だと思ってしまうのである。

 


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枯葉のような蛾 イカリモンガ

以前、このブログで紹介したように、
保護色の蛾で、翅を開いて静止する種は、
背景を間違えてしまうと、逆に目立ってしまって、
完全に蛾であることが分かってしまう。

いくら精巧な枯れ葉模様の翅を持っていても、
緑色の葉っぱに、翅を広げて止まっていると、
輪郭が、どう見ても蛾なのだ。

ところが、同じ蛾の仲間でも、
翅を閉じて葉っぱの上に止まる種がいる。

この場合には、輪郭が蛾のように見えないので、
緑色の葉っぱにいても、落ちている枯れ葉にしか見えない。

枯れ葉なら、捕食者に発見されても、
食べ物ではないので、全く問題ないのである。

下の写真のイカリモンガが、その好例である。

 


イカリモンガ(イカリモンガ科)

2012年10月6日 だんぶり池・青森

これは、わざと遠くから撮った写真であるが、
ちょうど真ん中に、枯れ葉のように見えるのが、
翅を閉じて静止するイカリモンガである。

どうだろうか?

枯れ葉が落ちているようにしか見えない???

 

 

イカリモンガ(イカリモンガ科)

2012年10月6日 だんぶり池・青森

近づいてよく見ると、蛾ではあるが、
体の輪郭が微妙にギザギザで、枯れ葉のように見えるし、
もちろん、色や模様も枯れ葉のようである。

しかも面白いことに、この子は、
枯れ葉に擬態することに自信満々のようで、
近づいても全く逃げる気配がない。

 

 

イカリモンガ(イカリモンガ科)

2012年10月6日 だんぶり池・青森

さらに、この角度から見ると、
触角そろえて前方に突出させ、
頭全体が、葉柄のように見える。

この子は、間違いなく演技をしているのだ。

 

 

・・・・・・・・

 

 

イカリモンガ(イカリモンガ科)

2010年8月29日 だんぶり池・青森

本種は、春から夏にかけては、昼間活動し、
チョウのように、花から花へと、蜜を求めて飛びまわる。

もちろん、このときには、頭部や触角は普通であり、
前翅の裏側の鮮やかな模様を見せている。

枯れ葉の演技はしていないのである。

 

 

イカリモンガ(イカリモンガ科)

2011年10月9日 だんぶり池・青森

鮮やかなオレンジ色の模様と相まって、翅を閉じて止まるし、
分類学上も、チョウと蛾の境に位置するようだ。

この写真を見る限り、テングチョウやベニシジミのようだ。

 

 


イカリモンガ(イカリモンガ科)

2011年6月4日 だんぶり池・青森

和名の由来となった鮮やかな碇(イカリ)の模様が見える。

もしかしたら、春から夏にかけては、周囲に枯れ葉がないので、
枯れ葉の演技はしないのかもしれないのだが!?

もちろん、こんな時には、近づけばすぐに逃げてしまう。

 

・・・・・

 

イカリモンガは、成虫で冬を越す。
 

もしかしたら、秋になって周囲に枯れ葉が目立ち始めると、
自分も枯れ葉のように演技するようになるのだろうか?

 

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枯れ枝に擬態する蛾 ツマキシャチホコ

自分の体色を背景の色や模様に似せて、外敵から身を守る種は多い。

そのように機能する色を、我々は「保護色」と呼んでいるが、
この場合は、うまく背景を選ばないと、自分の体の輪郭が浮き上がって、
逆に、目立ってしまうことがある。

緑色の葉っぱの上に、枯れ葉模様の蛾が翅を開いて止まっていたら、
そこに蛾がいることは、捕食者にバレバレである。


しかし、形態まで何かに似せていると、目立っても構わない場合もあるのだ。

その形態が、通常は、捕食者が餌として認識しないもの、
例えば、以前紹介した鳥の糞や枯れ葉などであれば、
捕食者はその虫を簡単に見つけることができるが、
すぐに食べ物でないことを認識して、興味を失ってしまう。

枯れ葉に擬態するマエグロツヅリガや、
↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120729/1/

鳥の糞に擬態するヒトツメカギバは、
↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20120918/1/

まさにその典型である。


最初は枯れ葉のような色と模様の保護色だけであったものが、
体の輪郭を変化させて、徐々に形態まで枯れ葉に似せてきたのだ。

そうすると、緑色の葉っぱに静止していても、
捕食者からは、非常に良く目立ってしまうが、
彼らは、枯れ葉を食うことはないので、それ以上攻撃することはないのだ。

 

というわけで、長い前置きであったが、
姿かたちが、枯れ葉そっくりな蛾がいるなら、
枯れ枝のような蛾がいたっておかしくない。

 


ツマキシャチホコ(シャチホコガ科)

2006年8月14日 印西市・千葉

この写真は、お気に入りの一枚である。

最初に見つけたときは、
「何でこんなところに、うまく枯れ枝が引っ掻かているのか?」
と、思って近づいたら、蛾だったのでちょっとだけビックリ。

翅がサクラの樹皮のような白っぽい色と模様で、
頭とお尻の先がうまく茶色に変色しており、
良く見かける折れた小枝そっくりである。

普通に地面にいたら、絶対に見つけられなかっただろう。


この写真で見る限り、当該ブログ内だけで通用する(?)ミラクル擬態である。

 

 


ツマキシャチホコ(シャチホコガ科)

2006年8月13日 印西市・千葉

これは、上と同じ個体である可能性が高いが、
前日に道路上で見つけたものである。

ちょっと油断してしまったのか、
この状態では、明らかに蛾である。


・・・・・・・・・・・


ということは、最初の写真のような止まり方は、
演技して、枝に似せていることになる!?

 

おそるべし、ツマキシャチホコ君!!!

 

 

 

ハネモンリンガ(ヤガ科)

2012年7月18日 城ヶ倉・青森

北国や山地で見られるこの子も、色や模様だけでなく、
形態まで、枯れ枝を真似ているようだ。

しかも、このような姿勢での静止状態も、立派に演技しているのだ。

まだ撮れてはいないのだが、翅をやや開き加減で止まっている彼らは、
明らかに(?)油断しているので、普通に良く見かける蛾になってしまうはずだ。

しかし、ミラクル擬態というには、もう一歩か?

 

 


ナカスジシャチホコ(シャチホコガ科)

2011年8月23日 城ヶ倉・青森

この子は、やや微妙であるが、枯れ枝に見えなくもない。

もしかして、両サイドの茶褐色の部分は、
分断色のような役割を果たしているのか?

 

 


そして、最後に衝撃の一枚!!!

 

 


オオヤナギサザナミヒメハマキ(ハマキガ科)

2012年月21 白岩森林公園・青森

これは、どう見たって植物である。

最初に見つけたときは、本当にびっくりした。

まさか、これが虫だったなんて!!

しかも、蛾である。

 

こんな感じの小枝は、何処にでも落ちていそうである。

もしかして、木の芽に擬態してるつもりかもしれないが・・・

 

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苔のような蛾

夜行性の蛾は、昼間は活動せず、どこかに隠れてじっとしているはずだ。

ただ、このようなときにでも、外敵に襲われる可能性があるので、
背景に溶け込むような保護色を進化させている種類も多い。

周囲の環境に似せた色や模様にするということは、
その環境以外にいるときには、このブログで何度も紹介しているように、
本来の蛾の輪郭が、はっきりして、逆に目立ってしまうのだ。

 

今回は、そんな感じがするちょっと可哀そうな蛾たちを紹介する。

 

ゴマケンモン(ヤガ科)

2011年7月8日 登別温泉・北海道

この子は、典型的な保護色の例として、例示されることが多い。

まるで苔のような模様と色の蛾である。

この状況は、微妙にOKなのかなと思うが・・・

 

 


ハガタアオヨトウ(ヤガ科)

2011年7月19日 登別温泉・北海道

この子も、ちょっと薄暗い森の中で、
苔の生えているような樹木に止まっていれば、
ほぼ完璧な保護色を持つと思われる。

しかし、このように、普通の葉っぱの上では、
折角の色と模様が、あまり役に立っていないようである。

 

 


キシタミドリヤガ(ヤガ科)

2012年8月22日 十石峠・長野

この写真の状況では、やはりちょっと苦しいか?

写真ではあまり分からないが、名前のとおり、
緑色を基調にした苔のような蛾だ。

やはり、もう少し場所を選んでほしかった。

 

 


アオバハガタヨトウ(ヤガ科)

2011年9月29日 城ヶ倉・青森

この子は、常夜灯に来ていたので、ある程度仕方がない。

でも、もう朝になったので、森の中のコケのあるところに帰りなさい!!!

 

 


オオアオバヤガ(ヤガ科)

2012年8月22日 十石峠・長野

しょうがないと言えばそうなのだが、この子は、
灯火採集をしたときに、飛んできたものだ。

白いシーツの上では、鮮やかな(?)苔の模様がよく目立つ。

 

 

ん・・・・・・・・・・?

んん・・・・・・・・・・??

んんん・・・・・・・・・・???

 

私ごときに写真を撮られるなんて、
この子たちは、みんな、例外中の例外なんだろう。


実は、この何十倍、何百倍の普通の子たちは、
見事に背景にマッチした場所にいて、
見事に、外敵から身を守っているはずのだ。


だから、そんな彼らは、決してカメラの被写体にはならない!!!


 

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