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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

飛翔中の虫たち(本章)

飛翔中のトンボやチョウを撮るときには、
デジカメの連射機能を使えば、そのうちの何枚かは、
ピンボケでない写真が撮れる。

そんな写真を、このブログでも、何回か紹介した。

 


ところが今日の写真は、連射機能を使用していない

普通にシャッター押して、偶然に(あるいは驚いて!)
飛び立ったときの写真である。

 

 

 

ジガバチ(ジガバチ科)

2013年6月2日 東海村・茨城

アザミの花にイチモンジセセリが来ている。

そっと近づいて(それでも1m以上離れているが)、
シャッターを押した瞬間、ジガバチが飛んで来た。

ジガバチは、イモムシを狩って、巣穴に運んでから産卵するが、
ときどき花にも、吸蜜にやってくるようだ。


実は、この写真がキッカケで、ある問題が解決したのである。

その問題と解答(?)は、文末に・・・・

 



 

 

ハナバチの仲間

2013年6月2日 東海村・茨城

上の写真と同じ場所で、今度は、
多分ハナバチが飛んでいる瞬間を、
偶然にも、撮ることができた。

後脚には、大きな花粉の塊が見える。


普段は、ほとんど起こらないような瞬間が、
同じ日に、連続して訪れたのだ。


⇒この日を「何か特別な記念日」にしても良いくらい???



 

 


スズメバチの仲間

2013年6月12日 安曇野・長野

こちらは、スズメバチ。

目の前を、もの凄い羽音を立てながら、横切った。

飛んでいく方向にカメラを向けて、ダメモト(?)で、
さりげなくシャッターを、一回だけ押した。

多少ピンボケの写真だが、これもミラクルな一枚だろう。

 

・・・・・・・



下の写真は、昨年末(2012年12月13日)のブログで、
かなり不思議な写真として、紹介したものである。
↓   ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20121213/1/


トガリハキリバチの仲間

2010年8月10日 御所湖・岩手

①このハチには、翅がない!!!
 どこから、どうやって、
 ここまで来たのだろうか????

②しかも、後ろの写っているキタキチョウの方は、
 翅に、ハチが止まっているにもかかわらず、
 平気で蜜を吸っている。


当時は、こんなことを書いていた。

 

しかし、一番上の写真のジガバチも、翅がない!!!!!!

シャッター速度が遅いので、
はばたきする翅が写らなかっただけのだ。


そう思って、写真を良く見てみると、
ハチは、ホバリングをしているので、
キタキチョウには、全く触れていない。

これで、②の謎も、一気に解決したことになる?!

   

 

 

 


 

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ちょっとだけ不思議な虫たち 何してんだ! そんな恰好で!!

虫たちの中には、普通では考えられない姿勢で、
静止している種類が少なくない。

その理由は、いろいろ考えられるが、
今回紹介する2種の蛾は、
本当に何をしてるのかわからない!?!?

 


ヨコジマナミシャク(シャクガ科)

2011年7月19日 登別温泉・北海道

白色の地に、茶褐色の独特の縞模様があるが、
胴部分が、かなり上に跳ね上がっている。

これは、ちょっとだけ不思議な止まり方だ!!!

一体、何故???

静止するときに、お腹を持ち上げる蛾は少なくない。

こんなに高く持ち上げる姿勢をとるのは、
写真の子だけなのだろうか?

 


ヨコジマナミシャク(シャクガ科)

2011年7月19日 登別温泉・北海道

いや、すぐ近くで見つけた別個体も・・・

同じように、胴体部分が反り返りすぎて、
前後が反転しているようにも見える。

どうやら、この子たちは、静止する時には、
腹部を、かなり上方にそり返す習性があるようだ。

 


そして、約2か月後・・・・・

同じような姿勢の蛾をみつけた。

 


ウストビモンナミシャク(シャクガ科)

2011年9月15日 城ヶ倉大橋・青森

褐色地に灰色の帯があり、先端に暗褐色の紋があって、
上のヨコジマナミシャクと良く似た姿かたちである。

なんと、この子も、全く同じように、
腹部を、情報に反り返らせているのだ。


両方ともEulithis属で、日本には、
この2種しか生息していないらしい。

 

 

ウストビモンナミシャク(シャクガ科)

2011年9月15日 城ヶ倉大橋・青森

実は、このようなお尻を挙げるポーズは、
モンシロチョウの交尾済みの雌にも見られ、
交尾拒否姿勢(MRP)と呼ばれる。

また、蛾の雌だけが行う、少しだけお腹を持ち上げるポーズは、
性フェロモンを放出しているときにも見られる。

しかし、今回のこの2種の蛾の場合には、
そうではなさそうだし、もちろんMRPでもないようだ。


軽くネット検索すると、このポーズで静止している写真が多い。

にもかかわらず!?! 

これが、どんな意味があるかについては、ほとんど言及していない。

 

もちろん、他の種類の蛾でも、お尻を上げて静止する場合がある。

しかし、上の写真のように、頭部を超えてまで、
お腹を曲げる種類はいないようだ。

ひょっとすると、以前紹介したような、
捕食者の攻撃を躊躇させるODDITYの範疇に入る???

そんな効果も、少しはあるのかもしれない。
↓  ↓   ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20130123/1/

 

いずれにしても、この2種の蛾が、何故この格好で静止するのか、
これからの研究・観察結果が待たれるところである。


 

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ちょっとだけ不思議な虫たち

4月になったので(軽い前振り?)、
クモに擬態する「珍しいカミキリ」を紹介しよう。


ヒガシカミキリ(ヒガシカミキリ科)

2013年4月1日 富士山頂・静岡/山梨

遠くで見たときには、本当にカミキリがいる! と思った。

前方に長く伸びる触角が、クモの前脚のように見えるし、
歩くときにも、足の動きに合わせて動かす。

よく見ると、背中に「東」という文字がある。

このカミキリには、かなり不思議な習性があって、
何処にいても、必ず東を向いて静止しているのだ。

だから、学名を、Akab utagis という。


さらに、驚くべきことに、ニシカミキリという近縁種がいて、
こちらは背中に「西」という文字がある。

当然、このカミキリは、西を向いて静止するのだ。

学名は、Loof lirpa という。


おそらく、まだ発見されていないが、
当然「南」と「北」の文字があるカミキリもいるようで、
昆虫マニアの間では、誰が先に発見するのか、競争になっているようだ。



??????????????????????

 


⇒今日は、4月1日なので、一度はやってみたかったネタです!!

 

 

(失礼しました)

ここからは、すべて事実です。

上の写真は、メガネドヨウグモというクモの仲間で、
背中に「東」の文字も、何も修正を加えていません。

 

メガネドヨウグモ(アシナガグモ科)

2012年6月27日 蓮華温泉・新潟

最初の写真と同じ個体を、
鮮明(?)に、撮ったものである。

背中にはっきりと「東」の文字が見える。

良く見ると、お尻から、一本の糸を出している。

 

 

メガネドヨウグモ(アシナガグモ科)

2012年6月27日 蓮華温泉・新潟

少し撮影アングルを変えてみても、
何となく「東」と読み取れる。

どうして、この特異な模様が、
和名にならなかったのだろうか?

 


しかし、別な日に、別な個体を撮った写真を見ると・・・・


メガネドヨウグモ(アシナガグモ科)

2011年6月1日 白岩森林公園・青森

かなり怪しくなってきたぞ!?

というか、この写真を最初に見たときには、
東という漢字を連想することは、おそらくないだろう。


どちらかというと、和名のとおり「メガネ」か?

 

というように、虫たちの模様は、同じものでも、
写真の写り方によって、変わって見えるのだ。

もっと正確に言えば、「東」という文字は、
それを見る側(情報の受け手)が、
頭の中で勝手に、判断し、作り出したもので、
これこそが、私が何よりも興味を持っている「擬態」の起源なのだ。


以前、このブログで、昆虫の翅や体にある模様に、
アルファベットを見出して、紹介したことがあった。
↓  ↓  ↓
http://kamemusi.no-mania.com/Date/20110217/1/


昆虫のアルファベットも、当然「東」と同様に、
体の模様を何かに似せる「擬態」の起源・本質を、
さりげなく表しているのだと思う。

だから、フクロウやヘビのような目玉模様にしても、
虫の食痕まである葉っぱや枯れ葉の模様にしても、
あるいは、鳥のフンのように見える姿かたちにしても、
それらを見た側が、全く勝手に解釈して、全く勝手に、
驚いたり、避けたりしているだけなのである。

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ちょっとだけ不思議な虫たち ツマグロヒョウモン

筑波山の山麓で、あまり見慣れないチョウを見つけた。

飛び方はゆっくりで、近づいても遠くへ逃げない。

昔、徳島市内でも、見かけたことがある南方系のチョウ、
ツマグロヒョウモンの雌のようだ。

 

しかし、何で、筑波山にいるのか?!!!!!

 


ツマグロヒョウモン(タテハチョウ科)

2010年7月11日 筑波山・茨城

地球温暖化の影響で、北上を続けているのだろう。

もちろん、生息範囲が広がっている原因は、温暖化だけでなく、
食草の一つであるパンジーやビオラなどの園芸スミレが
冬にも広く植えられるようになったのもあるだろう。

だから、現在では関東でも越冬できるようだ。


⇒ネットで最新情報を調べると、現時点では、
 茨城県まで、定着しているとのことだったので、
 今回の撮影できた個体は、北限のツマグロヒョウモン、
 ということになるのだろうか?

 

 

ツマグロヒョウモン(タテハチョウ科)

2010年7月11日 筑波山・茨城

このチョウの不思議なところは、それだけではない。

ツマグロヒョウモンは、雄と雌の体色がまるで違うのだ。

雄は普通のヒョウモンチョウ(豹柄)であるが、
雌は写真のように、濃い紫色と白とオレンジ色の、
非常に良く目立つ体色なのだ。

 

 

ツマグロヒョウモン(タテハチョウ科)

2010年7月11日 筑波山・茨城

実は、雌のこの体色は、南方系の毒チョウのカバマダラに、
良く似ていて、ベイツ型擬態していると言われている。

最初に、飛び方はあまり速くないと書いたが、
ヒラヒラと飛ぶ感じは、カバマダラ類に似ているのだ。

 


そこで・・・・

カバマダラの写真があったはずで、苦労して(?)、
パソコンに保存してある古いファイルを探した。

ようやく、石垣島と与那国島で撮ったスジグロカバマダラの写真が出てきた。


スジグロカバマダラ(タテハチョウ科)

1999年6月18日 石垣島・沖縄

ただのカバマダラは、沖縄でも個体数は多くないようで、
見かけるのはほとんど、スジグロカバマダラのようである。

デジカメがようやく入手できたころの、
ずいぶん昔の写真・・・・・・

 

 

スジグロカバマダラ(タテハチョウ科)

1999年6月18日 与那国島・沖縄

そして、さらに不思議なのは、ここからだ。


いくら温暖化とはいえ、モデルとなったカバマダラ類は、
九州以北には、ほとんど生息していない。

たまに九州南部で見つかることがあるらしいが、
完全に、迷蝶扱いされているようだ。

決して、温暖化にともなって、ツマグロヒョウモンと一緒に、
北上を続けている訳ではない。

 

だから、少なくとも本州では、カバマダラ(擬態のモデル種)と、
ツマグロヒョウモン(擬態種)が、一緒に生息している地域はなく、
擬態として機能していない可能性が指摘されている。

 

????????????????????????????


つまり、ツマグロヒョウモンの雌は、沖縄では、
モデルが存在するので、擬態種とみなされるが、
日本本土では、モデル種がいないにもかかわらず、
良く目立つ色彩のまま、普通に生存しているのだ。


この現象について、研究者は次のような状況を考えている(注)


①近年の人為的な(?)地球温暖化によって、
 ツマグロヒョウモンの分布拡大(北上!)が急速で、
 モデル種(カバマダラ類)の分布拡大が、それに追い付いていない。

⇒モデルがいない環境に比較的長い間生息し続けることは、
 ほとんどの鳥が「この色彩は不味い」という経験をできないことになる。
 だから、目立つツマグロヒョウモン雌は、野鳥に食べられやすく、
 個体数は、減少傾向になるはずである。
 しかし、本州のツマグロヒョウモンは、
 各地で増加傾向にあることがわかっており、
 この仮説は棄却されるだろう。


②通常の場合、警戒色を持つモデル種と、それに擬態する種は、
 いずれも、比較的ゆっくり飛ぶ傾向が認められる。
 しかし、モデルのいない地域に進出したツマグロヒョウモンは、
 速く飛ぶようになって、良く目立つが、捕食を逃れている。
 だから、モデルがいなくても、生息できる。

⇒モデルのいる地域に住むツマグロヒョウモンも、
 一度鳥に追いかけられると、素早く飛ぶことが知られている。
 だから、もともとは、姿かたちの擬態+行動擬態で、
 外敵の目を欺いていることになるのだが、
 最初から素早く飛んでいるのでは、折角の擬態の効果が弱まる可能性がある。
 この色彩変異が、交尾行動に関係しているのなら別であるが・・・


③ツマグロヒョウモンは、実は毒チョウで、味が悪い可能性がある。
 だから、沖縄では、カバマダラ類とミュラー型擬態として振る舞っている。
 北上して、カバマダラ類のいない地域に進出しても、
 単独で、警戒色を持つチョウとして振る舞うことできる。

⇒過去に、ベイツ型擬態と思われてた種が、詳細に調べると、
 同じように味が悪く、ミュラー型擬態であったという例は、
 近年いくつも出てきてるようだ。
 ただ、他種のヒョウモンチョウの多くは、
 同じくスミレを食草としているので、
 ツマグロヒョウモンだけが、食草起源の有毒物質を、
 体内にため込んでいるとは、少し考えにくい。


④そもそも、ツマグロヒョウモンの雌がカバマダラ類に似ているのは、
たまたまそうなっただけであり、擬態とは無関係である。

⇒以前紹介したが、同じヒョウモンチョウの仲間に、
 もう一種だけ、メスが黒っぽくなる種がいる。
 日本各地で見られるメスグロヒョウモンだ。
 このチョウの雌は、イチモンジチョウにそっくりであるが、
 その理由は、まだはっきりわかってはいない。
 ↓  ↓  ↓
 http://kamemusi.no-mania.com/Entry/5/ 


⑤南方から本土に移動してきた渡り鳥には、
 沖縄で苦い経験をしたモデルの記憶が残っているので、
 ツマグロヒョウモンを攻撃しない。

⇒この説明は、昔から良く目にするが、一つ難点がある。
 モデルと擬態者が同じ地域にいる場合でさえも、
 モデルの数が相対的に減ってくれば、
 擬態種が、最初に食べられる可能性も高くなるからだ。
 このような擬態種とモデル種の数のバランスに関しては、
 ベイツ型擬態の宿命のようなものなので、
 この仮説には、ちょっと無理があるような気がする。




 

(注)もちろん、これらの仮説は、以前このブログでも紹介したことのある
   ジャコウアゲハに擬態するアゲハモドキの例にも当てはまる。
   当然、仮説の検証結果は、種(組み合わせ!)によって異なるだろうが・・・

 

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ちょっとだけ不思議な虫たち チャイロスズメバチ

季節外れのブログ内容・・・・

北国では、もう冬になろうとしている気温の低い10月、
いつも立ち寄る「道の駅:矢立峠」のトイレの壁に、
お腹が黒色の見慣れないスズメバチがいた。


チャイロスズメバチという比較的珍しい種類だ。

 

チャイロスズメバチ(スズメバチ科)

2012年10月7日 矢立峠・秋田

ネットで調べると、北海道や本州の山地に生息しているが、
限られた場所でしか見つからないらしい(注)。

そして、このチャイロスズメバチには、
想像を絶するような、かなり不思議な習性があるのだ。


(注)社会寄生というかなり変わった生活史から、
  スズメバチ類が分布する多くの地域で見つかってはいるが、
  当然、絶対的な数が、本家のスズメバチ類より多くなることはない。

 


チャイロスズメバチ(スズメバチ科)

2012年10月7日 矢立峠・秋田

何と、チャイロスズメバチの越冬した女王は、
最初から自分で、巣を造ることはないのだ。

では、どうするのかと言うと、信じられないことだが、
巣作り中のキイロスズメバチやモンスズメバチを見つけると、
そこにいる女王と壮絶な戦いをして、最終的には女王を殺して、
その巣を乗っ取ってしまうのだ。

 

 

チャイロスズメバチ(スズメバチ科)

2012年10月7日 矢立峠・秋田

最初のうちは、乗っ取った巣の元女王の働きバチを使って、
自分の産んだ幼虫の世話をさせながら、卵を産み続けるのだ。

7月以降になると、自身の働きバチも羽化してくるので、
キイロスズメバチの働き蜂と、チャイロスズメバチの働き蜂が、
両方せっせと働くちょっとだけ不思議な巣になってしまう。

やがて、元の宿主の働き蜂が死に絶えてしまうと、結果的に、
その巣を完全に乗っ取ってしまうことになるのだ。
 
さらに、秋になってから、普通に雄バチと越冬女王も出現する。

 

 

チャイロスズメバチ(スズメバチ科)

2012年10月7日 矢立峠・秋田

一体、何故、チャイロスズメバチは、
こんなことをするようになったのだろうか?

多分、初期の段階から巣作りをしないことのメリットは、
営巣場所の選択や、働き蜂を生んで育てる初期負担がなくなることだ。

逆に、近くにいる巣作り中のスズメバチの女王を探し出して、
その女王と戦わなければならないというリスクもある。


それでも、チャイロスズメバチは、このような戦略を採用したのだ。

不思議なのは、最初の段階で、元女王の働きバチを使って、
どうして、自分の子供の世話をさせることができたのだろうか?

考えてみると、ちょっとだけ不思議である。

 

もともと、社会性昆虫のワーカー(働きバチ)は、
自分で産卵能力があるにも関わらず、自分の子供ではなく、
妹の世話をするという性質がある。
(⇒この利他性の進化については、別の機会に紹介したい)

最近の研究結果で、ある程度のことは分かってきている。

社会寄生者が、元女王の産んだ働き蜂から攻撃を受けないために、
自分の体の匂いを、元の種に似せるか、あるいは無臭になるか、
いずれにしても、化学的に欺く手段が必要である。

実際には、チャイロスズメバチが巣を乗っ取るのは、
キイロスズメバチとモンスズメバチの2種だけが知られており、
両種の体表の化学組成が似ていれば、前者の戦略は有効かも知れない。

もし宿主となる2種のスズメバチの炭化水素が似ていなければ、
後者の無臭作戦の方が良いだろう。

最近の分析機器の発達は、目覚ましいものがあり、
体表の炭化水素の組成なんかは、簡単にわかってしまう。

そして、チャイロスズメバチの炭化水素組成は、
それぞれの宿主と似ていないことが明らかとなったのだ。

もちろん、キイロスズメバチとモンスズメバチの成分組成も似ていなかった。


では、炭化水素の量を減らして、無臭になっているのかというと、
実は、そうでもないようで、チャイロスズメバチの体表炭化水素量が、
宿主や他のスズメバチと比べて、少ないということはなかった。

違いがあったのは、メチル側鎖のついた化合物の量で、
他の多くのスズメバチに比べて、チャイロスズメバチでは、
その量が顕著に少なかったのだ。


メチル側鎖のついた炭化水素は、ミツバチやアシナガバチなどで
特に重要な炭化水素であることがわかっているから、
チャイロスズメバチは化学的に「透明」になることで、
宿主に同化している可能性が示唆される。

また、メチル側鎖のついた炭化水素が完全にゼロでない点は興味深い。

チャイロスズメバチ間の認識のためには、
この化合物が必要であるために、
全くゼロにできないのかも知れないのだ。

 

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