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ちょっとだけ、不思議な昆虫の世界

さりげなく撮った昆虫のデジカメ写真が、整理がつかないほど沢山あります。 その中から、ちょっとだけ不思議だなぁ~と思ったものを、順不同で紹介していきます。     従来のブログのように、毎日の日記風にはなっていませんので、お好きなカテゴリーから選んでご覧ください。 写真はクリックすると大きくなります。   

これは、シャッターチャンス!!


虫たちの食べ物は、基本的には植物である。

だから、虫たちが葉っぱを食べている場面は、
林道を歩いていれば、普通に見られる。


その一方で、予想外に多くの虫たちが、
栄養効率の良さからなのだろうか、
他の虫を食べる肉食性のだ。

ただ、このような肉食の虫たちが、他の虫を捕獲する瞬間や、
実際の食事風景を見る機会は、あまり多くない。

 


今回の写真は、さらに珍しい??

 

 


アオジョウカイとハエの仲間

2014年6月3日 白布峠・山形

ジョウカイの仲間は、その容姿からは想像しにくいが、
基本的に肉食性であり、予想外に敏捷に、
強力な大あごで、他の虫を捕獲する。

しかも、捕獲した獲物は、
その場でさりげなく食べ始める。


・・・・近くに、ハエが!!


まるでハイエナのように、そっと近寄って、
ほんのちょっとでも食べられればと思ってる?

 

 

 

アオジョウカイとハエの仲間

2014年6月3日 白布峠・山形

このように、まだ捕獲者が食事中なのに、
その獲物をの「おこぼれ」を狙って、
他の虫が近寄ってくるのは、珍しいことだと思う。

ただ、食べるのに夢中なのか、ジョウカイの方は、
多分「たかがハエごときに!」という感じで、
あまり気にしていないようだ。

 

 

 

キオビクロスズメバチとムネアカオオアリ

2014年8月4日 酸ヶ湯温泉・青森

この写真は、酸ヶ湯温泉近くのトイレの常夜灯の下で、
明け方の5時前に、撮影したものである。

前夜に誘引されてきた蛾が飛び回っているときに、
おそらく何らかの事故で死亡したのだろう。

それを見つけた1匹のムネアカオオアリが、
大きすぎる獲物を、その場で食べ始めた。

 

・・・上からハチが!!!

 

 

 

キオビクロスズメバチとムネアカオオアリ

2014年8月4日 酸ヶ湯温泉・青森

ハチは、ちょっとだけホバリングしていたが、
すぐ近くに着地して、アリのいない反対側から、
さりげなく食べ始めた。

おおらかなアリの方も、ハチを全く気にすることなく、
何事もなかったように、食べ続ける。


何かしらのバトルがあることを期待していたのだが・・・

 

 

 

キオビクロスズメバチとムネアカオオアリ

2014年8月4日 酸ヶ湯温泉・青森

食事中のハチとアリは、仲間だと思っているのか、
あるいは、お互いの存在に気付いていないのか、
仲良く(多分?)食べ続けていた。


この状態は、クヌギの樹液に集まる虫たちの雰囲気だ。


2匹の虫たちは、なかなか良い味を出していると思う。

自画自賛のベストショット・・・・?

 

    

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ちょっと不思議? ミスジヒメヒロクチバエ

前回に続いて、北海道で撮った虫・・・


翅の模様が特徴的なハエの仲間だ。

体は小さいのだが、緑色の葉っぱの上では、
白黒の縞模様は、予想以上に良く目立つ。

 


多分ミスジヒメヒロクチバエ(ヒロクチバエ科)

2014年7月6日 芽室・北海道

今まで見たことのない翅の模様だったので、
帰宅して、写真同定するまでは、
北海道特産の珍品のミバエの仲間であると、
信じ切っていたのだが・・・

本州にもいる普通種であることが分かった。

ただ、この写真の子だけは、黒スジがやや太いようで、
近似種のニセフトスジヒメヒロクチバエかもしれないのだが・・・

 

 

 


ミスジヒメヒロクチバエ(ヒロクチバエ科)

2014年7月6日 芽室・北海道

手持ちの「札幌の昆虫 木野田君公著」にも、
撮影時期と場所が比較的近い本種が掲載されており、
こちらは、ミスジヒメヒロクチバエで、間違いないだろう。

これだけ、よく目立つ翅の模様なので、
雌雄のどちらかだけに特徴的に見られ、
交尾行動に関係していると思われたのだが・・・

 

 

・・・その予想は、見事に裏切られたのだ!!!

 

 


ミスジヒメヒロクチバエ(ヒロクチバエ科)

2014年7月6日 芽室・北海道

しばらく観察していると、どうやら、
2匹が互いに関心を寄せあっているので、
交尾の前段階のような雰囲気になってきた。

良く目立つ翅を上下に震わせたり、体を回転させたり、
動いては止まったりと、結構せわしなく動き回っている。

ただ、本種は、見た目が全く同じなので、
雌雄の判別をすることが、この状態では出来ない。

多分、この子たちは、雌と雄なのだろうが・・・

 

 


ミスジヒメヒロクチバエ(ヒロクチバエ科)

2014年7月6日 芽室・北海道

とりあえず監察を続けると、ようやく、
より活発に見えた方の1匹が、背後に回ってマウントした。

後で、写真をよく見ると、背後の雄(?)の方が、
複眼の間が多少とも狭いように感じるが、どうだろうか?


もしかしたら、雄と雄の疑似交尾だったのかもしれないのだが・・・

 

 

 

ミスジヒメヒロクチバエ(ヒロクチバエ科)

2014年7月6日 芽室・北海道

こちらは、すぐ近くで見た、別個体の交尾シーン。

後で、この写真を見て気になったのは、
下になっている雌が、口器を突き出しているか、
または、何かを咥えているかのように見えることだ。

最初の写真の個体も、同じように見える。

 

ネット情報では、この仲間は、交尾するときに、
雄が雌にプレゼントをするようなことが書かれていたが、
もしかしたら、それかもしれない。

今回の観察では、全く見逃していたのだが・・・

 

 

 

多分ミスジヒメヒロクチバエ(ヒロクチバエ科)

2014年7月6日 芽室・北海道

そして、ある程度予想されたのだが、
こんなことになってる光景を、さりげなく見る。


性フェロモンを使用しているからなのか?

それとも、見た目が雌雄で変わらないからなのか?

 

 

     

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病死した虫たち③ 何故人目に付くところで?


前回までに紹介したように、病気で死亡したバッタは、
しばしば、人目に付きやすい場所で発見される。

このような現象は、寄生者である糸状菌の側が、
胞子を風に乗って飛ばすために、何らかの手段で、
宿主であるバッタの行動を制御しているように見える。


ところが、一般的に空気伝搬しないとされる、
ウィルス病や細菌病で死亡した虫たちも、
植物体の上部で死亡する傾向があるようだ。

例えば、ウィルス病に感染したマイマイガ幼虫の死体は、内部が液状化し、
皮膚が破れると、内部に充満したウィルスが落下して、下の葉っぱに付着する。
当然、それをを食べた別の幼虫が、ウイルスに感染するのだ。

だから、ウィルスの側から見れば、
なるべく高い位置で宿主を死亡させる方が、
伝搬(子孫を残す!)のためには、有利になるはずだ。

 


今年になって、アメリカの研究者たちが、
マイマイガの幼虫に寄生するバキュロウィルスが、
たった1個の遺伝子によって、幼虫の行動を変化させることを、
学術雑誌に報告して話題になった。

 

(⇒今回の写真は、本文の内容とは無関係です。)

 

 

マイマイガ幼虫(ドクガ科)

2011年7月21日 大沼公園・北海道

マイマイガは、約10年周期で大発生を繰り返すようだ。

その際には、周辺の樹木の葉を食い尽くしてしまうので、
重要な森林害虫とされている。


だから、このように単独で、食痕のない葉っぱにいるのは、
むしろ珍しいことなのかもしれない。

 

 

 

マイマイガ幼虫(ドクガ科)

2013年5月31日 東海村・茨城

健康なマイマイガの幼虫は、夜に葉っぱを食べるのだが、
明るくなると、木から降りて身を隠すことが知られている。

ところが、バキュロウイルスに感染してしまった幼虫は、
昼間も木から降りずに、最終的には、そこで死亡するのだ。

 

 

 

マイマイガ産卵中(ドクガ科)

2013年8月2日 道の駅喜多の郷・福島

当然のことであるが、このウイルスに感染すると、
幼虫の行動が変化することは、以前から知られていたが、
このたび、遺伝子組み換え技術と、幼虫の行動解析から、
その驚くべきメカニズムが、解明されたのだ。


かなり、簡単に記述すると・・・

まず、マイマイガの幼虫を、数種類のバキュロウイルスに感染させ、
特定の遺伝子【A遺伝子とする】を持ったウィルスに感染した幼虫だけが、
飼育容器の上に登って、その場所で死亡することを確認した。

実験的に【A遺伝子】を取り除いたウィルスに感染させた幼虫には、
飼育容器の上に登る行動が見られなかった。

 

 

 

マイマイガ卵塊(ドクガ科)

2014年6月2日 道の駅喜多の郷・福島

そして、ここからが凄いところであるが、
本来【A遺伝子】を持っていないウィルスに、
実験的に【A遺伝子】を組み込むと、そのウィルスに感染した幼虫は、
高い場所に移動するようになったのだ。

こうして、ウィルスの持つたった一つの【A遺伝子】が、
幼虫の行動変化を引き起こす原因ということが証明されたのだ。


おそらく【A遺伝子】の持つ具体的な機能として、
「宿主のマイマイガ幼虫が、脱皮して蛹になるのを阻害する」
と考えられているようだ【注】


そうすると、実際に起こっていることは、
「ウィルスが幼虫の行動を操作して、植物の上方へ登らせる」
というセンセーショナルなフレーズではなく、ただ単に、
「脱皮ホルモンが出なくなるので、幼虫が蛹になれずウロウロしている」
という状況だけなのかもしれないのだが・・・・

 

いずれにしても、「ちょっとだけ不思議な昆虫の世界」ではある。

 

 

【注】幼虫が脱皮できなくなる直接原因は、
   大別すると、以下の2点が考えられる。

   ①ウィルスの増殖によって、宿主の幼虫の前胸腺が機能しなくなり、
    脱皮ホルモン(エクダイソン)が放出されなくなる。

   ②ウィルスの増殖によって、アラタ体が何らかの影響を受けて、
    蛹化時期にはなくなるはずの幼若ホルモン(JH)が、
    放出され続けて、JHが完全に0になる時期がない。

   上記の研究者たちは、①の原因で、
   幼虫が普通に蛹になることができなくなると考えているようだ。

 

 

 

    

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病死した虫たち② ミカドフキバッタ

前回紹介した何種類かの病死虫に関しては、
自然状態で、特に頻繁に見られるわけではない。

しかし、今回紹介するミカドフキバッタは、例外だ。

北国の短い夏が終わる頃になると、
良く目立つ場所で死んでいるバッタの姿が、
普通に(!!)見つかるのだ。

一目で、数匹も見つかるような状態は、
ちょっとだけ不思議な光景だ。

 

 


ミカドフキバッタ(バッタ科)

2014年9月8日 白神・青森

腹部が、かなり垂れ下がっているが、
まるで生きているように見える。

この時期になると、何故か、
植物の茎を抱きかかえるように死亡しているのが、
かなりの頻度で見られるのだ。

 

 


ミカドフキバッタ(バッタ科)

2014年9月8日 白神・青森

すぐ近くで見つけたこの子も、一見すると、
ススキの穂に止まっているだけに見えるが、
やはり、病死している。

このようにバッタを病死させるる原因は、
学名を Entomophaga grylli という、
バッタのみに寄生する昆虫病原性糸状菌である。

 

 


ミカドフキバッタ(バッタ科)

2014年9月8日 白神・青森

ただ、なかには、こんな感じで、
明らかに死骸であることが分かる場合もある。

この糸状菌に感染したバッタは、
植物の上方に登って、茎にしがみ付くようにして、
落下することなく、死亡する傾向があるようだ。

 

 


ミカドフキバッタ(バッタ科)

2014年9月8日 座頭石・青森

それにしても、何故、感染したバッタが、
葉っぱの先に登ろうとするのだろうか?

この現象だけから判断すると、
糸状菌の方が、何らかの手段で、
宿主であるバッタの行動を制御し、
胞子を風に乗せて、遠くまで飛ばすために、
なるべく上方で、死亡させているように見える。

 

 

 

多分ミカドフキバッタ(バッタ科)

2014年6月30日 豊浦森林公園・北海道


これは、白い胞子(の塊?)のようなものが、
かすかに肉眼で見える死骸である。

 ⇒宿主も糸状菌の種類も、異なっているのかもしれない。
  宿主は、北海道にのみ分布するサッポロフキバッタかも?


この胞子が、風に乗って飛んでいけば、
かなりの範囲で病死虫が出る可能性がある【注】


 

 


次回予告!!


病死虫が、人目に付きやすい場所で発見されることは、
昔から良く知られており、その原因や機能も考察されていた。

今年になってから、アメリカの研究者たちによって、
ウィルス病で死んだマイマイガの幼虫を実験材料にして、
その仕組みが、解明されたようだ。

次回、その研究結果を、簡単に紹介したい。


 


【注】学生時代、昆虫病理学という必修科目があった。

   あまり好きな分野ではなかったと記憶しているが、
   当時は、毒性の高い合成殺虫剤が悪者にされて、
   ホルモンやフェロモンを利用した害虫防除法や、
   病原性微生物を使用した防除法が、かなり注目を浴びていた。

   ①天敵に対する悪影響がない、②人畜に対する安全性が高い、
   ③抵抗性が発達しにくい、④ターゲット害虫が限定される等の
   すぐれた特徴があったからだ。


   しかし、・・・・・・

 

 

    

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病死した虫たち①


過去に様々な理由(?)で、虫を飼育したことがあるが、
容器の中に病気が蔓延して、死なせてしまったことは少なくない。

特に、幼虫を大量に飼育したときには、
糞や古い餌の除去、そして飼育密度など、
かなり注意深く取り扱わないと、
ウィルスや細菌による伝染病が容器内で発生し、
飼育虫は、簡単に全滅してしまう。


しかし、実際の野外では、少なくとも私が虫を探しながら、
林道を歩いているときには、飼育容器内で見たような、
体液がドロドロに溶けた幼虫の死体に、出会ったことがない。

おそらく、自然状態で見ることのできる病死虫は、
ウィルスや細菌に犯されたものではなく、
カビ(糸状菌)による病気が原因であることが多い。

昆虫病原性糸状菌に感染した個体は、体内の水分がなくなり、
原型をとどめたまま、干からびたように死んでいるからだ。

 


今回は、そんな病死した虫たちの写真を紹介したい。


(以下閲覧注意!)

 

 


死したハマキの仲間

2010年7月30日 だんぶり池・青森

かろうじて、ハマキガ類の成虫であることが分かる。

白きょう病菌に犯されて死亡した虫の体表には、
カビ状の菌糸が見られることが多いが、
このように全身に広がるのは、多分珍しいと思う。

 

 

 

病死した多分ツヤケシハナカミキリ

2013年6月21日 芝谷地湿原・秋田

脚や触角の状態が、まるで生きているようだ。

この場所まで歩いてきて、突然、
動けなくなってしまうのだろうか?

一般的に、昆虫病原糸状菌の感染によって死亡した個体は、
植物体にしがみついた状態で発見されることが多い。

⇒この写真は、当初「多分アカハナカミキリ」としていたが、
 nabita氏より、ツヤケシハナカミキリではないかとのご指摘があり、
 さりげなく修正しました。
 
 
 



 
 
 
 

 

 

病死したコメツキの仲間

2013年8月12日 蔦温泉・青

この子は、ほぼ垂直の葉っぱに静止しているのに、
風が吹いても、落下することはない。

おそらく、脚の先端の爪が食い込んでいるのだろう。


糸状菌は、養蚕業等に被害を与えてきた一方、
それを逆手にとって、生物農薬としての研究も進められている。

もちろん、ウィルスや細菌病についても、沢山の研究が行われて、
一部は、すでに商品化されているのだが・・・

 

 

 

病死したヒメバチの仲間

2014年6月22日 だんぶり池・青森

空中を華麗に飛び回るハチの仲間も、例外ではない。

この子は、チョウ目の幼虫(アゲハ類?)に寄生するハチであるが、
一体、どの時期に感染したのだろうか?


最近、ミツバチが突然姿を消してしまうという、
ニュースを目にする機会が多くなった。

この原因はよく分かっていないようだが、
温暖化等の気候変動説、栄養バランス説、遅効性殺虫剤説、
遺伝子組み換え生物の影響説、ストレス説等と並んで、
病原菌による伝染病も有力な説の一つに挙げられている。

 

 

 

病死した多分アオハムシダマシ

2014年8月4日 萱野高原・青森

美麗種も、こうなってしまっては、台無しである。

ウィルスや最近など、他の病原性微生物とは異なり、
多くの病原性糸状菌の感染は、経皮的に起こるようだ。

感染単位は、普通は胞子であり、寄生昆虫の体表に付着すると、
発芽管を伸ばし、クチクラ層を貫通して体液に入り込むのだ。

 

・・・・

 

すでにお気づきのように、今回の5種類の病死虫は、
全て非常に目につきやすい場所にいた。

その理由は、いろいろ考えられそうだが、
ひとつだけ言えることは、どうも「カビに侵された虫たち」は、
地面に落下して死ぬのではなく、葉っぱの上の良く目立つ場所で、
息絶えている可能性があるのではないかと思う。

だから、特に意識して探さなくても、このような写真が撮れるのだ。


 ⇒次回は、死んだバッタの写真しかありません。


 

    

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